最近テレビ、新聞、ネットニュースで見ない日はないほど大きな問題としてあげられている「逃亡犯条例」改正の問題。9日の開催された大規模なデモについて触れる前に簡単に説明します。
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そもそも「逃亡犯条例」とは域外(他の司法管轄区)で犯罪を犯した刑事事件の容疑者を域外へ引き渡すことに関する条例のことを指します。香港と台湾・マカオ・中国本土の間には現在、犯罪人引き渡し協定がありません。このため、台湾・マカオ・中国本土で犯罪を犯した容疑者が香港に逃亡し、香港で逮捕されたとしても、犯罪を犯した地域に引き渡して法の裁きを受けさせることはできません。

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「逃亡犯条例」の改正に着手することとなった発端は、昨年台湾で起きた香港市民の男が交際相手の香港女性を殺害した事件に遡ります。男は殺害した後、香港へ逃げ戻ったところをマネーロンダリング容疑で逮捕されました。本来ですと台湾にすぐに引き渡すべきですが、現在の条例内容では中国の他の地域への引き渡しは認められないため、政府が条例改正を提案しました。

刑事事件の容疑者を台湾へ引き渡すことを可能にする「逃亡反条例」改正案を政府が立法会(議会)に提出して数カ月が過ぎましたが、審議は進みませんでした。この男は10月には釈放される予定のため、立法会が7月半ばから10月までの休会に入る前に政府は男を台湾へ引き渡す構えです。

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今回の改正案は、長期的な引き渡し協定を交わしていない地域について案件ごとに引き渡しを検討するのを可能にするものです。しかし台湾は、改正が成立すれば台湾市民が中国本土へ引き渡される事態にもつながるとして、改正されても懸念が払拭されるまでは引き渡し請求はしないとの立場を示しています。また改正されれば、民主活動家、ジャーナリスト、中国側とのコンフリクトが生じている企業関係者らも引き渡しの対象になる可能性があるとして、デモには在住外国人などの参加者も見られました。

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こうしたなか、9日に開催された大規模デモは、午後2時半頃から銅饠湾にあるビクトリア公園からスタートし、気温30度を超える猛暑のなか、多くの人(警察発表はピーク時で24万人、主催者発表は103万人)が金鐘にある立法会議事堂前まで行進しました。行進道中、湾仔では全車線を開放しても追いつかないためロックハートロードも片側車線を開放しました。金鐘ではデモ隊と警察の衝突も発生しました。香港特区政府の改正案に対する反対デモはこれまで何度も行われていますが、この日のデモ参加者数は1989年の天安門事件の際のデモに次いで過去2番目を記録しました。

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一方でこれまでの多くの反対の声により、政府は譲歩し改正案を修正しました。改正案では、犯罪者引き渡しのハードルは当初禁固1年以上に相当する犯罪者にしてましたが、反対の声を考慮して3年以上に引き上げ、それでも反対の声が収まらないため7年以上になりました。7年以上は香港では最高刑となります。つまり殺人犯などよほどの凶悪犯罪者しか引き渡しはできなくなることを意味し、たとえ改正が可決したとしても、今後、香港に逃げ込む犯罪者が増えて治安悪化も予想されます。