4年に1度開かれる「立法会議員選挙」。立候補の届け出は154通、前回の137通を超えた過去最高となりました。定数が70議席に対し、候補者は300人以上に。今回のポイントは民主派の議席が選挙体制改革案の否決権を行使できる1/3を割り込むか、また「香港独立党」など香港独立を主張・推進する一部候補者の立候補を認めなかった問題なので不利に陥っている親政府派がどこまで議席を維持できるか、という点でした。
2014年のセントラル占拠行動後、香港を変えたいと過激思想に走る若者たちが増えていたなか、社会の安定を願う大多数の香港市民が今回どれほど投票するか注目されていました。ちなみに外国籍で永住権をもっている18歳以上の市民には投票権があります。投票は午後10時30分まで行われました。
翌5日未明からは香港国際空港に隣接する「ASIAーWorld EXPO」にて開票が行われました。
今回はおよそ220万人が投票(香港の人口はおよそ720万人)投票率は58%に達し、ともに過去最高に。70議席のなか、注目されていた親政府派の議席は3議席減った40議席、また民主派が30議席(3議席増)をそれぞれ獲得し、民主派は1/3以上を確保しました。
私が手にしているのは地元紙「明報」。見出しは「200万人が投票、最も長い一日に」。
5日付の東方日報「200万人投票、新たな記録を打ち立てる」
開票速報は会場各所に設置されているモニターで。
このモニター(写真下)の後方には簡易スタジオが設置され、候補者のインタビューなどが行われました。
疲労困憊の報道陣の姿も。日付が変わってすぐに会場入りしている報道陣も多く睡魔との闘いながらの作業が続きました。
当選者らが会場に入ると一斉にフラッシュ!今回の選挙を振り返りながらインタビューにこたえる当選者たち。
セントラル占拠行動に参加していた若者たちの当選の行方も話題の一つでした。
この女性はいわゆる「美人すぎる過激派」として今回の選挙で話題となった青年新政の游●(草かんむりに恵)禎氏。(写真下)
本土派(排他主義勢力)の「教祖」と呼ばれる黄毓民氏と同じ九龍西選挙区に出馬し、ともに落選の瀬戸際にあい票を争っていたため、内部紛争の激化が取り沙汰されていました。
当選した新民党の田北辰氏(左)、葉劉淑儀(レジーナ・イップ)氏(中央)と、容海恩氏。
中央のレジーナ・イップ氏は、次期行政長官の有力候補者。特区政府の元保安局長で2003年に香港基本法23条に基づく「国家安全条例」の立法作業を手掛けたことで知られています。当時は混乱の責任をとって辞任しその後渡米。帰港後に政界に打って出て着々と支持基盤を広げてきました。
セントラル占拠行動の参加者や本土派6人が当選した今回の立法議員選挙。
それらの勢力を含めて民主派は1/3の議席を確保したことなっていますが、セントラル占拠行動が内部分裂によって終焉を迎えたように、主流民主派、本土派、セントラル占拠行動の参加者は一枚岩ではありません。
これまで議会内には過激派勢力が4人いましたが、そのうち2人が残ったほか、さらに3人の本土派の若者が加わることで、議員妨害がさらに悪化、審議がさらに滞ることが予想されます。さらに政府のプロジェクトの遅延・中止や、経済・福祉対策の停滞、公務員の給与支給の遅延なども懸念されます。
過激派議員に引きずられて民主派が独立や住民投票を推進すれば、様々な事件が起こって大混乱に陥ることも推測されます。