2月25日付 地元紙「明報」より。
見出しは「バラマキ388億ドル、免税額拡大」財務長官の曽俊華(ジョン・ツァン)氏(写真左)が24日に発表した2016年/17年度の財政予算案。主に「新経済秩序」と銘打ち香港の競争力を維持・強化するための措置を網羅しました。
新経済秩序というのは、
■世界経済の重心の東へのシフト。これは、欧米中心だった世界経済が中国などを中心
■新興市場の重要性と影響力の拡大。つまり中国、ロシア、インドなどのブリックスや東南アジア、中東などの国々を指し、まさに「一帯一路」の地域
■IT革命(電子商取引やソーシャルネットの発達)などを指します。
研究開発の応用、金融科学技術(フィンテック)、新興企業、クリエーティブ産業を柱とするイノベーション推進と、「一帯一路」、貿易・物流、金融サービスを柱とする新市場の開拓を提唱しています。
具体的には
(1)香港科技園は将軍澳の工業団地に82億ドルを投じ先進的製造業を集積させるスマート工業ビルを建設
(2)科学技術を応用し市民生活を改善する「イノベーション科学技術生活基金」の設立に5億ドル確保
(3)イノベーション科学技術基金に50億ドル注入
(4)国際的なファッション展示会「CENTRESTAGE」開催
(5 )電影発展基金に2000万ドル注入し広東語映画の中国本土での配給支援
(6)5月に「一帯一路サミット」開催など
また、個人所得税は2万ドルを上限に75%還付、控除は基本・ひとり親・既婚者とも10%引き
上げ、父母・祖父母の扶養控除は15%引き上げ。不動産税は 1軒1四半期1000ドルを上限に4四半期免除、生活保護、高齢者手当、高齢者向け生活保護、
障害者手当の受給者には1カ月分を追加支給することに。
一方で曽俊華・財政長官は、旧正月はじめに起こった旺角暴動についても触れ、香港社会がさらに不安定になっていることを指摘、今年9月には立法会議会選挙が行われることからさらに状況が悪化するのではないかという懸念を示しました。
なぜここまで悪化したのかというと、それは「教育の問題」がまず挙げられます。2012年に進めようとした国民教育。これは中国の洗脳教育を懸念したもので、市民およそ9万人(これは主催者発表。警察発表は3万人)に及ぶデモが起こりました。
国民教育を阻止するために民主派団体のひとつ、学民思潮などによる「政府本庁舎を包囲したデモ」がさらに起こったことで、教育問題の改革を断念、頓挫したしわ寄せが今きています。
そのため若者たちの内向志向がますます高まっており、香港の前途は厳しくなっているのです。
2月28日に行われた立法会補欠選挙は、投票率が前回を下回り、民主派と親政府派の候補の接戦で民主派が当選したものの、旺角暴動を主導した本土民主前線の候補が6万票を獲得して7人中3位になりました。
暴力に反対せず、過激な路線を支持する市民がそんなにいるということは、香港はこれからも混乱がやまず不安定な状況が続くことが予想されます。