林鄭月娥(キャリー・ラム) 行政長官は11日、就任後初めてとなる2017年度施政報告(施政方針演説)を立法会で発表しました。
経済発展、イノベーション・科学技術、スマートシティー、クリエーティブ産業、土地・住宅、医療・衛生、高齢者・弱者支援・民生改善、労働者の権利、教育、青少年育成、芸術・文化・スポーツなどに関する政策を柱にしたものです。

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行政長官選挙時に掲げた政権公約(マニフェスト)を基本としており、中流層向けの住宅「港人首置上車盤」や法人税の2段階制などが目玉政策として盛り込まれました。
この法人税の2段階制を導入することにより、企業の利益のうち200万ドルまでの課税率は現行の16.5%から8.25%に引き下げられることになり大きく注目されています。

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特に中小企業に恩恵を集中させるため、この低税率は1つの企業グループのうち1社が享受できることとします。
さらに企業の科学技術研究投資を促進するため、研究開発費のうち200万ドルまでは税金を300%控除、残りについては200%控除することが可能となり、これら新税制は2018年中に実現することになりそうです。
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シンガポールなどの近隣地域との競争の中で、かねて法人税を引き下げる必要が指摘されていました。

特区政府は税率を10%に引き下げれば税収は年間約50億ドル減少すると試算していましたが、現在の安定した財政から税務を調整する余地は十分とみています。
公有地の売却収入や不動産取引に関わる税金、また不動産抑制政策によち税金などで特区政府は毎年のように大幅な財政黒字を計上しており、莫大な財政余剰を抱えています。

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『星島日報』「林鄭長官、気前良く700億ドルを放出、経済・民生に新たな原動力」
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『香港経済日報』「林鄭長官、購入支援住宅に段階設ける、住宅購入に希望」
経済政策の方向性としては、年末までに国家発展改革委員会との間で香港が「一帯一路」建設に参入する全面的な協定を調印するほか、「一帯一路」弁公室の人員を拡充、特区政府と香港貿易発展局による「一帯一路」サミットを毎年開催すると述べました。
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また期待が寄せられていたのは住宅政策や低所得層支援策。しかし目玉となった中流層向けの住宅物件や公共住宅住民に限定販売する住宅物件にウエートが置かれたため、賃貸型公共住宅の供給がますます滞るとの懸念が上がってます。低所得層向けに打ち出した交通費補助も並行輸入業者に有利なだけとの見方もあります。

とはいえ、市民の期待にこたえて民生問題に重点を置いた施政報告は、世論調査で返還後3番目に高い評価を得たものとなりました。